着物の長持ちを実現する:適切な保管と収納方法の完全ガイド

豆知識

「実家から着物を譲り受けたけど、どのように保管したらよいのかわからない」という方もいるでしょう。普段着物を着ない方は「どこに保管するのか」「してはいけないことは何かわからない」など着物の保管方法を難しく考えがちです。確かに洋服と同じ保管方法では良い状態を保つのは難しいでしょう。しかし、正しい保管方法を身に着ければ着物は長く愛用できます。

長く大切に着続けてきた着物を今後も愛用できるように、ここでは着物の正しい保管方法お手入れの方法などを解説します。

 着物の保管に適した収納場所

着物を普段から着る機会がある方は、気が付いたら枚数が増えていることも珍しくありません。友人や親から着物を譲り受けたり子どもの入学式、卒業式、七五三など行事で購入することもあるでしょう。着物は一度手に入れると何年も着用できるため、洋服と比べて頻繁に買い替えることもありません。

なかには一度着用してから数年間袖を通さないものや、子どもに譲るまで保管している着物もあるでしょう。

このように着物は年に何度も着る普段使いのものから数年に1回着るか着ないかの出番の少ないものまでさまざまです。

頻繁に着用する着物は出し入れしやすい保管場所に収納するのが便利です。一方、数年着用する予定のない着物は、長期的に保管することを考慮した保管方法がベストです。

利用頻度に合わせて適した収納場所を見ていきましょう。

着物保管には桐タンスがベスト

桐タンスは防湿性に優れており、防虫効果も高いのが特徴的。湿気や虫は着物にとって大敵なので礼装や子どもに譲りたい振袖など長期間着用せずに保管する着物は、桐タンスが最高の保管場所です。

しかし着物の保管のために桐タンスを新たに購入したとしてもスペースを確保するのが大変です。また桐タンスの購入金額もおおきくなります。

さらに最近の住宅には洋室のみで、桐タンスがデザイン的に合わないという場合もありますよね。

そんなお悩みにも解決できるように、最近ではクローゼットに収納できるサイズの桐製衣装ケースが販売されています。これなら着物の収納場所を確保しやすくなります。

さらに洋室でも違和感なく置ける桐タンスなどもあるため、部屋や好みに合わせて選んでみてください。

普段着の着物はプラスチックケースもあり

習い事で着る着物や夏の暑い時期に普段使いする浴衣など、着用頻度が高い着物は入れ替えがしやすいプラスチックケースに収納するのも良いでしょう。プラスチックケースは湿気を呼ばない素材なので着物の収納にもおすすめです。ただ通気性が良いわけではないため、除湿シートを使用することでケース内の湿気のこもりを防ぐことが大切です。

着物の保管に気を付けたいポイント

着物を保管するのに試みてきたことが、実は悪影響を与えてしまっていたということもあるようです。知らず知らずに着物の寿命を短くしていたなんてことのないようにここでは着物の保管で注意すべきポイントをいくつか解説します。

正しい方法で着物の保管をしていきましょう。

まず気を付けたいのは湿度

着物の保管で何より気を付けたいのが湿気です。日本は湿度の高い気候のため、何も対策をしていないと、気が付いた時には大切な着物にカビが発生するという残念な結果になることも考えられます。さらに昔と今の住環境も変わり、隙間をできる限り少なく機密性能の高い住宅が増えています。その分湿気が逃げない環境になるため、昔よりもしっかりとした湿気対策が必要です。

クローゼットにはボックス型の除湿剤、引き出しやケースの中には除湿シート、たとう紙のなかにはシリカゲルなどの除湿剤を活用しましょう。

絹とウールを一緒に保管しない

着物は洋服と同じように絹やウールなどさまざまな素材が使われています。洋服をクローゼットに収納する際は、下着類やボトム、Tシャツなどジャンルごとに分けて収納することが多いですよね。着物の場合は、絹製とウール製を一緒に保管するのはおすすめできません。

着物は虫に食べられないように保管することが大切ですが、虫が好んで食べるのがウールです。そのためウールの着物と一緒に絹の着物も収納していると、ウールの着物を食べにやってきた虫がついでに絹の着物も食べる危険が高まります。

クローゼットに着物を保管する際も、ウールのセーターやコートなどと一緒に収納せずに、プラスチックケースに入れてふたをして保管するなどの対策が大切です。

重ねすぎない

タンスの引き出しやプラスチックケースに入れる際は、まだ入るからと何枚も重ねて収納したくなりますが、それは着物にとって良くありません。着物をぎゅうぎゅうに重ねると下の着物に折り目が付いてしまいます。

着物を重ねて収納する際は、多くても3~4枚を目安にしましょう。また、一番下に収納する着物は自宅で洗濯が可能な着物にすると折り目やしわが付いても対策が簡単です。

種類の違う防虫剤を併用するのはやめましょう

虫による被害を抑えるために防虫剤を使うのは良いですが、さまざまな防虫剤を併用するのは避けましょう。異なる系統の防虫剤を一緒に使うと、科学反応を起こしてガスが発生する場合があります。このガスにより着物が変色したり生地を傷めたりすることも考えられます。また薬剤が溶けて 衣料にシミが付いたり変色したりすることがあります。大切な着物のために防虫剤を入れたものの、変色や生地が傷んでしまったというトラブルに発展しないように防虫剤の使い方にも注意しましょう。

着物と小物は別で保管

着物を収納する際に小物類もまとめて保管したくなりますよね。しかし、プラスチックやゴムが使われている小物類は一緒に入れてはいけません。防虫剤と化学反応を起こしガスが発生する場合があります。

ガスが発生すると着物の変色や傷みにつながるため、小物類は別の場所で保管するのが安心です。

直射日光の防止

湿気と同様に気を付けたいのが直射日光です。紫外線を長時間浴びると着物が変色し、生地が傷む原因になります。

たとう紙に入っていれば大丈夫だろうと考えがちですが、日光に当たれば日焼けしてしまいます。

また、直射日光だけでなく、蛍光灯でも着物の色褪せの原因になるため室内でも注意が必要です。

ハンガー保管はしない

着物はハンガーに掛けた状態で保管するのも良くありません。洋服は立体裁断されており、ハンガーに掛けた状態でも問題ありませんが、着物は横に置いてたたんで保管するように作られています。そのため、ハンガーに掛けて保管していると型崩れの原因になります。

着物を良い状態で長期間保管するためには平らにたたんで保管するのがベストです。

たとう紙は交換する

たとう紙は着物を入れておくと湿気を吸収する便利なアイテムです。しかしたとう紙に入れておけばずっと安心というわけではありません。たとう紙が吸収できる湿気にも限界があります。交換時期は環境によって変わります。

たとう紙が湿気を吸収しきれなくなると表面に茶色の斑点がでてきますので交換しましょう。

たとう紙は呉服店やネットでも販売しています。ただネットの場合には100枚単位など大量の枚数で販売している場合もあるため購入時にしっかりと確認しましょう。たとう紙は使いたい枚数をその都度購入しましょう。たとう紙は使わなくても湿気を吸収してしまいます。そのため時間が経過した古いたとう紙では十分に湿気を吸えない可能性もあります。

まとめて買った方が安いからと多く購入するのではなく必要枚数を購入してください。

クリーニングに出すという方法も

着物は保管する環境や保管する前のお手入れによって状態が変わります。

誤った保管方法ではすぐに色褪せや虫食いを発生させてしまうこともあります。一方で正しい保管方法を用いれば何十年も良い状態を保てます。ただ湿度の高い日本で着物を長期間保管し続けるのは難しいものです。

着用した着物は目には見えなくてもほこりや皮脂が付着しそのままにしておくと着物の変色や傷みにもつながります。

着物は自分で気軽に丸洗いできないものがほとんどです。

そんな時にはクリーニングに出すのがおすすめです。クリーニングで丸洗いすれば目に見えない皮脂汚れやほこりなども落とせます。

着物を保管する前の準備と手順

着物を着用したらそのままタンスやケースの中にたたんで保管するのはNGです。その着物だけでなく、一緒の場所に保管している着物にも虫食いや変色などの被害が広がる恐れがあります。ここでは、着物を保管する前の準備を解説します。

着物を買ったときの状態で保管しない

着物を購入したらそのまま保管した方が良いのではと考えて証紙をそのままに化粧箱のまま保管する方もいるでしょう。しかし、着物を保管する際はたとう紙以外の紙は別に保管しましょう。またタンスの下に新聞紙を敷かないようにしてください。新聞のインクが着物に付いてしまうこともあります。

着用後は陰干しで汗を飛ばす

着物を着ると汗が付着しています。汗や皮脂汚れをそのままにしているとシミや変色の原因になります。そのため、着用後は陰干しをして湿気を取り除いてから保管しましょう。

陰干しの方法は以下の通りです。

【方法】

1.着物用のハンガーに着物を掛ける

2.着用後乾いたタオルで優しく落とす

3.直射日光が当たらない場所で干す

4.屋内の場合は窓を開けて風通しを良くする

陰干しは2日程度を目安として干し続けます。汗をかいたり雨の日に着用したりした場合は3日以上干しましょう。

陰干しの際には、汚れやすい襟元や裾、裏地に汚れがないかチェックするのを忘れないようにしてください。もし汚れを見つけたら汚れにあった対策が必要になります。

自分で対応するのが難しい場合にはクリーニングに出して対応してもらうのが安心です。屋外に干す場合夜間は屋内に取り込みましょう。

アンティーク着物と一般的な着物の保管方法の違い

ここ最近では、アンティーク着物が人気で着用する方も増えました。アンティーク着物は、新しい着物の保管方法とはまた違う対応が必要です。ここでは、アンティーク着物の保管方法やお手入れ方法などを解説します。

アンティーク着物の特別な保管方法

アンティーク着物を着用した後は、ほかの着物と同様に陰干しをして湿気を飛ばします。ただし、アンティーク着物は一般的な着物と比べて染料が脆くなっていることがあり、少し日に当たるだけで色褪せる恐れも。また縫糸に関しても弱くなっていることがあるため、負担のかかる陰干しの時間も半日~数日と短くします。

ただ保管中のカビの発生や変色のリスクは新しい着物よりも高いため、陰干しの頻度は多めに年に3回程度行うのがおすすめです。

アンティーク着物の保管方法は、一般的な着物と同じ湿気のこもらない通気性の良い場所を選びましょう。プラスチックケースは通気性が悪いため向いていません。桐のタンスが最適ですが布製の衣装ケースでも良いでしょう。

アンティーク着物を手に入れた時からカビ臭いと感じる場合は、表面にカビが見えなくてもカビ菌が潜んでいると考えられます。その場合は月に1回虫干しをして繊維を乾燥させましょう。またカビ菌が発生している着物と一緒に保管するとカビ菌がほかの着物に付着して広がることも大いに考えられます。被害を最小限に抑えるためにもアンティーク着物はほかの着物とは別の場所に保管すると良いでしょう。

まとめ

着物の保管は洋服とは異なることも多いため、難しいと感じる方も少なくありません。そのため「親から譲ると言われたけど断った」「実家の片付けで着物がたくさん出てきたけど処分しようと思っている」と着物の保管を諦めることもあるでしょう。確かに洋服とは違う保管方法ではありますが、着物の特徴を理解すれば正しく保管ができます。特に湿気と虫対策はしっかりと行うことが着物を長期間良い状態にキープする秘訣です。

日本の伝統工芸品のひとつである着物は、職人技が生かされた美しいデザインも多く、海外からも注目されています。ぜひ正しい保管方法で状態の良い着物を長く愛用してください。

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