ギターを長く愛用し続けるためには、温度・湿度の管理を中心とする正しい保管方法の実践が大切です。また、ギターの場合、保管時に活用できるさまざまなアイテムがあります。適切な保管をするためには、自分のギターや保管環境に合うアイテムを選ぶことも大切です。
この記事では、最初にギターに正しい保管方法の実践が必要である理由を確認します。そのうえで、ギターの種類や季節ごとの保管方法などを解説しましょう。大事なギターの状態や音色を維持したい方は、ぜひ記事を参考にしてください。
1. はじめに: ギターを保管する際の基本
ギターの正しい保管方法を知るうえでは、まずギターに適切な保管が必要な理由を把握することが大切です。また、保管時の温度・湿度・場所などがギターに与える影響を知ることで、自分が実践する保管方法が適切かどうかの判断もしやすくなります。
ギター保管の基本概念:なぜ適切な保管が必要か?
ギターに適切な保管が必要な理由は、ギターという楽器がとてもデリケートであり、誤った置き方や保管を続けることで、劣化や不具合などのトラブルが起こりやすくなるからです。ギター本体に劣化や不具合などが起これば、当然のことながらギター本来の美しい音色が出づらくなります。また、本体の形状が変わってしまうほどの大きなトラブルが起きた場合、修理が必要になるかもしれません。
こうしたトラブルを防ぎ、演奏時に本来の音色を出せるようにするためには、正しい保管方法の実践によって良い状態を保つ必要があります。
温度、湿度、場所がギターに与える影響
ギター本体の状態や音色に影響を与えやすいのが、保管時の温度・湿度・場所の3つです。詳細は後述しますが、ギター保管に不向きな温度・湿度の場所に本体を放置すると、以下のようなトラブルによって演奏できない状態に陥る可能性もあります。
- ネックが反る
- 指板が割れる
- 弦が錆びる
- カビが発生する
- 木材が膨張して音質が乱れる など
大事なギターに上記のようなトラブルを生じさせないためにも、ギターの種類や季節に合った方法でギターの保管や管理をすることが大切です。
ギターを守るために理想的な温度と湿度
ギターにとって最適な環境は、「湿度:50%、温度:25℃」です。
ギターを保管する際には、温湿度計を使って部屋やケース内の温度・湿度を測定し「湿度:50%、温度:25℃」になっているか?」を確認することが大前提となります。
ギターを新しく買った場合は、最初に温湿度計を購入し、「自分の家がギターにとって適した環境になっているか?」を確認することから始めてみるとよいでしょう。
2. ギターの保管で使用する3つのアイテム
ギターの状態を保つためには、「ただ適当にしまう」のではなく、ギター専用アイテムを活用することが大切です。なかでも特におすすめとなるのが、スタンド・ケース・調整剤の3つになります。
ここでは、この3アイテムの特徴とメリット・デメリット、選び方のポイントなどを紹介しましょう。
スタンド
ギター専用のスタンドは、ギターを置いておく際におすすめのアイテムです。専用スタンドに置いておくと、壁での立てかけや床置きと比べてネックへの負担もかからなくなります。
スタンド利用のデメリットとしては、ギター本体がホコリなどにさらされやすくなったり、ラッカー塗装に未対応のスタンドを使った場合にギターの塗装が剥げたりすることなどがあげられます。
ケース(ハードケースvsソフトケース)
ギターケースには、大きく分けてハードケースとソフトケースの2種類があります。ハードケースとは、木材などの樹脂で作られた頑丈なケースです。一方でソフトケースは、布製でクッション性の高いケースの総称になります。
ケース内の湿度などを保つうえでは、しっかりと密閉できるハードケースがおすすめです。ただ、ハードケースの場合、ケース自体が重く「背負って歩く」といったことができません。そのため、ギターを持って歩く・電車に乗るなどの機会が多い場合は、持ち運び用として「ソフトケース」、自宅での保管用に「ハードケース」を使い分けるもの一つになります。
湿度調整剤
ギターの湿度調整剤とは、ケース内の湿度を調整してくれるアイテムの総称です。湿度調整剤と似たものに乾燥剤があります。乾燥剤はいわゆる湿気取りに近いものです。これに対して調整剤には、「湿度が高いときに湿気を吸収し、乾燥時には湿気を出す」といった湿度コントロールの機能があります。
なお、ギターの調整剤には、ギターに最適な保管湿度を保持するもののほかに、ケース内が極度の乾燥状態になったときに湿度状態を最適に戻す種類があります。具体的な入れ方・使い方は、商品によって異なります。各商品のパッケージを見るか、ギター専門店で確認するとよいでしょう。
3. ギターにおける季節ごとの保管ポイント
ギターの保管ポイントは、季節によって異なります。なかでも特に注意が必要となるのが、気温・湿度が大きく変わりやすい夏と冬です。
「夏」におけるギターの保管ポイント
夏は、高温多湿になりやすい季節です。この時期の保管ポイントは、以下の4つになります。
- 高温の部屋には置かない
- エアコンの風や直射日光があたらない場所に置く
- 湿度調整剤で多湿対策をする
- 演奏後は、ギターに付着した汗をすぐに拭く
「冬」におけるギターの保管ポイント
冬は乾燥への注意が特に必要となる季節です。冬にギター保管をする場合、以下のポイントを大切にする必要があります。
- 寒い部屋には置かない
- ギターをスタンドに置く場合、加湿器を使用する
- 加湿器の蒸気や暖房の熱風が当たらないようにする
- 必要に応じて湿度調整剤を活用する
4. ギターの種類別保管方法
ギターの状態を保つための適切な保管方法は、実のところギターの種類によって多少の違いがあります。また、具体的な保管方法は「毎日弾くのか?」「長期保管するのか?」で変わります。
ここでは、アコースティックギターとエレキギター・エレキベースにおけるそれぞれの保管ポイントを解説しましょう。
アコースティックギターの保管方法
アコースティックギターを弾き終えたら、適切なクロス・オイル・研磨剤などを使ってお手入れをします。このお手入れで汗や手垢を拭き取ることで、これらの原因で生じるサビやシミを防ぎやすくなります。
アコースティックギターを毎日弾くのであれば、スタンドに立てて手に取りやすい場所に置いておくことも可能です。その場合、高温多湿と低温低湿を避け、ギターにとって最適な「湿度:50%、温度:25℃」を保つことが大切になります。
また、アコースティックギターは木材でできていてとてもデリケートです。手に取りやすい場所に置く場合、直射日光やエアコンの風を避けることも重要でしょう。
ギターのネックに負担をかけないためには、横積みなどをせずにグリップ側を上にして立てて置くことも大切です。
アコースティックギターを長期保管する場合は、専用のハードケースに入れておきましょう。この場合、湿度が高い時期であれば除湿剤を入れる必要があります。また、ギターを長期保管する場合、弦をややゆるめた状態にすることも重要です。(弦の状態については諸説あり)
エレキギターとエレキベースの保管方法
エレキギターやエレキベース本体のお手入れ方法は、アコースティックギターとほぼ同じです。ただ、エレキギターのなかには、本体に電池が入っているものもあります。このタイプのギターを長期保管する場合、液漏れを防ぐために電池そのものを抜いておいたほうがよいでしょう。
また、エレキギター・エレキベースの場合、楽器本体だけでなくエフェクター・ギターアンプ・ケーブルなどの保管も必要となります。これらの小物類の保管で大切になるのは、一つひとつを袋などに入れて包んでおくことです。
そうすることで、入出力端子などにホコリが溜まりにくくなります。また、小物類とギター本体を別収納することで、例えば「エフェクターの角でギターに傷がついてしまう」などのトラブルも防ぎやすくなるでしょう。
5. 正しいギターのしまい方と注意点
ギターの状態や音色を維持するためには、「ただ適当にしまう」のではなく、「正しいしまい方」を実践することも大切です。なかでもギターを専用ケースに入れて保管するときには、保管場所・置き方・弦のテンションの3点で注意が必要となります。
【ギターの保管場所】
ケースを置く場所は、温度湿度の影響を受けやすい建物の外壁からできるだけ離すことも大切になります。保管場所は、クローゼットのなかでもよいでしょう。
【ケースに入れたギターの置き方】
置き方の基本は、ヘッドストックを上にしてギターが「縦」に立った状態にすることです。横積みすることは絶対にやめてください。
【弦のテンション】
弦のテンションには諸説あるのですが、基本的には弦のペグを1~2回ほど半回しをして軽く緩めるぐらいがおすすめとされています。そうすることで、ネックの反りを防ぎやすくなるようです。自分のギターに合う弦のテンションを知りたいときには、ギターの専門店に確認するとよいでしょう。
6. シールド、ストラップ、ピックの保管方法
ギターをしまうときには、本体だけでなく小物類の保管もしっかり行なう必要があります。シールド、ストラップ、ピックの保管ポイントは以下のとおりです。
【シールド】
輪っかのように丸めて保管します。シールドを長持ちさせるためには、8の字のように巻くのがおすすめです。
【ストラップ】
ギター本体とストラップが擦れると、本体に傷などがつきやすくなります。演奏が終わったら本体からストラップを外し、別々で保管することが大切です。また、ストラップの汗や汚れを拭き取ることも長く使うためのポイントになります。
【ピック】
ピックは、ピックケースやホルダーに入れる・挟むのがおすすめです。自宅で毎日ギターを弾くのであればピックホルダーに挟んでも良いですし、大量かつさまざまな形状のピックを持っている場合、仕切りのあるケースに収納してもよいでしょう。
7. ギター保管のメリットとデメリット
最後に、ギターを適切な方法で保管するメリット・デメリットと、保管方法を間違えた場合のリスクを解説しましょう。
適切な保管がギターの寿命に与える影響
そもそもギターは、各パーツを部分修理・交換しながら何十年も使い続けられる楽器です。例えば、ヴィンテージギターと呼ばれるもののなかには、1950年代頃に製造されたものもたくさんあります。
そのため、ギターの適切なメンテナンスや保管を続ければ、部分修理をしながら何十年も使い続けられるでしょう。
ただし、正しい方法で保管を続けるためには、例えば「ハードケース内に調整剤を入れる」や「調整剤を定期的に交換する」、「温度湿度をチェックして適切な対処をする」といった手間やお金がかかります。これらは、適切な方法で保管をするデメリットといえるかもしれません。
しかしそれでも、適切な保管方法を実践し続ければ、先ほども触れた以下のようなトラブルが起こりにくくなります。
- ネックが反る
- 指板が割れる
- 弦が錆びる
- カビが発生する
- 木材が膨張して音質が乱れる など
保管方法を間違えた場合のリスク
保管方法を間違えた場合、先述のさまざまなトラブルによって修理不可能になることがあります。
例えば、ギターのネックが反りを通り越して折れてしまった場合、弦の張力に対して十分な強度を確保できなければ、職人さんでも「修理不可」の判断をくださざるを得なくなります。
この場合、そのギターには「修理用のパーツ取り目的での売却」や「廃棄処分」以外の選択肢がなくなります。こうした状況からせっかく買ったギターを無駄にしないためにも、正しい方法でメンテナンスや保管を続けることが大切になるでしょう。
7. まとめと関連情報
ギターはとてもデリケートな楽器です。ギターの状態や音色を維持するためには、高温低温と多湿乾燥を避け「湿度50%、温度25℃」の環境で保管を続けることが大切になります。
また、ギター保管では、以下のポイントを意識しながら自分のギターの種類や保管環境に合った対処をする必要があるでしょう。
- 演奏後は、汚れを拭き取るなどのメンテナンスをする
- 毎日弾く場合、グリップ側を上にしてスタンドに立てて置く
- 長期保管をする場合、ハードケースに入れる
- ハードケースの横積みや、ギター本体の横置きは避ける
- ケース内の湿度は、調整剤でコントロールする
- 直射日光やエアコンの風が当たらないようにする
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